こんにちは、現役公認会計士の植村拓真(うえむら たくま)です。
本記事では、管理会計論(短答式)の勉強法について解説します。私は、なぜか異常に管理会計論の成績が良かったです。
お試しで受験した12月短答では9割5分の得点を獲得して、本番の5月短答では9割の得点を獲得しました。
お試しの12月短答は、試験自体は当然不合格でしたが、管理会計論の異常な得点率のおかげで、総合的に見ても合格まであと一歩手前までというレベルまで達していました。
短答の合格のボーダーラインの得点率が全体で7割なので、仮に一つの科目で8割でも取れれば、その他の科目が非常に楽できるのです。
ましてや、9割も取れればより楽勝になります。
他の科目でちょっとミスしたとしても、痛くも痒くもなくなるくらいです。
とはいえ、本番では埋没問題も出題される可能性もありますから、始めから気負って9割を目指す必要はありません。
ボーダーラインの7割取れれば十分です。
さて、管理会計論は、財務会計論の次にボリュームの多い科目です。
ということはつまり、財務会計論の次に勉強に時間がかかる科目ということですね。
計算問題の量も多く、すべてを完璧に仕上げるのにはかなりの時間がかかります(財務会計論の計算ほどではないですが)。
さらに、生半可な理解では正答できないような問題も多いため、試験本番で正答できるようにするためにはその論点に関する徹底的な理解が求められます。
たとえば、総合原価計算の問題については、工程別総合原価計算や組別総合原価計算などの種類ごとのボックス図の書き方を完璧にマスターしたうえで、問題に応じて書き分けることができないといけないですし。
製造間接費予算差異に関する問題についても、分析図を的確に書き分けることが出来るようにならなければ、正答が難しい問題が出題されます。
一方、個々の論点自体はそんなに難しい話はなく、論点の理解はすんなりいきます。
その理解を、本番当日にきちんと解答に出しきれるか、というところですね。
また、計算問題についても一回解けるようになれればそうそうその問題の解き方を忘れることはありません。
簿記と同じく、解けるようになればあとは定期的なメンテナンスをするだけで済むようになります。
マスターするまでには時間がかかりますが、一旦マスターできればあとはラクできるということですね。
飛行機と同じですね。飛行機も離陸するまでは大量のパワーを必要としますが、一旦離陸してしまえば、それからはあまりパワーを使わずとも高度を維持できますよね。
だから、管理会計論も勉強を始めた段階では結構大変な時期が続きますが、歯を食いしばって勉強をしっかり継続していけば、答練でも高得点を取ることができるようになります。
また、管理会計論の理論も短答においては、対策にそれほど時間はかかりません。
単純に覚えるべき量が少ないというのと、計算を勉強している過程で理論も同時に勉強している論点が多いからです。
私は短答の理論対策でやっていたことといえば、予備校の通学時間の合間に、電車の中にて予備校で配られた短答理論問題集を解くのと、間違えた問題の論点についてテキストを確認する、くらいのことしかやっていません。
なので、管理会計論の勉強のメインは計算といえるでしょう。
管理会計論は大きく原価計算編、管理会計編に分かれます。それでは、早速それぞれ順を追って解説して、最後に理論についても触れますね。
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原価計算は、とにかく繰り返し書く
普段から口酸っぱくして「書く勉強はするな!」と主張してきた私ですが、今回ばかりはこの主張を捻じ曲げてしまうこと、お許しいただけますでしょうか。
管理会計論、とりわけこの原価計算の部分では、この「書く勉強」をせずして、対策することができません。
総合原価計算のボックス図や、製造間接費の予算差異分析図、標準原価差異分析のボックス図など、
原価計算の問題は書くことでしか解き方をマスターできません。
テキストを眺めているだけでも、問題集の解答を眺めているだけでも、絶対に身につきません。
実際に自分の手を動かしてみて、自分でボックス図なり分析図なりを完成させることで初めて身につくのです。
これだけは、問題を解く際に何度も自分で繰り返し書いて、書いて、手に覚えこませるしかありません。
それでも、十分な量をこなせば、ある時期を境に問題を見ただけで手が勝手に動いてくれるようになります。
問題の出題パターンもある程度決まっているので、
「この問題は工程別総合原価計算の累加法だから、ボックス図を2つ書かないといけない」
とか
「この問題は正常仕損費の度外視法で解く問題だから、正常仕損品の数量分だけ当期投入の数量を減らす処理が必要になる」
とかを瞬時に判断できるようになります。
この段階までたどり着ければこっちのものです。先ほどお話したとおり、管理会計論の計算問題は一度マスターしてしまえば、そう簡単に忘れることがないからです。
ここは本当に、簿記と同じくマスターできるまでは泥臭い作業が続きます。
続くんですが、歯を食いしばって頑張ってほしいです。
ここで苦労した分だけ、あとで楽ができます。論文式試験の勉強のときに楽ができます。
私も管理会計論の計算は、短答前にほぼほぼ完璧にすることができたため、論文式の直前期は管理会計論の勉強にほとんど時間をかけていません。
だから可能な限り、ここの分野はなるべく早めにマスターして他の受験生に圧倒的な差を作っておきましょう。
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管理会計は原価計算の後に
管理会計は原価計算よりも計算のウエイトが少し落ちて、理論のウエイトが上がります。
内容も原価計算よりテクニカルな論点が増え、とっつきにくく感じることが多くなることかと思います。
ですが、こちらも繰り返し問題集をこなせば難なく解けるようになります。
また、原価計算と比べて、書いてマスターする必要のある問題が減るので、勉強にかかる時間も原価計算よりは少なくなりますね。
ただ一方で、原価計算と比べ、管理会計は個々の論点が少し細かいので、学習した内容をマスターしたと思っても、割とすぐに忘れてしまうというリスクがあります。
ですので、学習の初期の段階では「時間がかかるが忘れにくい原価計算」を優先的に勉強を進めて、「比較的時間はかからないが忘れやすい管理会計」の学習を後から徐々に進めていくという方針でいけば効率的です。
管理会計のベースとなる勉強法はいつも言っているように、以下のプロセスで大丈夫です。(もちろん、原価計算も同じプロセスです)
倍速の講義音声聞く・テキストのざくっとした理解による短時間のインプット
↓
問題集解く(問題に悩む・解くのに時間はかけすぎないで)
↓
解説・テキストの確認、解法の理解
↓
復習のタイミングに気をつけて後日、問題集を解き直す
↓
上記のプロセスを、問題集の問題全部自力で解けるようになるまで繰り返す(=問題集の問題に全部○マークを付せるようになるまで繰り返す)
さて、ここで管理会計の個別論点について、いくつか特記事項としてコメントしておきます。
財務情報分析
出題は短答のみ。忘れやすい論点なので勉強は後回しでもよし。
最悪、論文では出ないので短答の直前に完璧にするようにする。
ちなみに数年後に受験する修了考査の科目「経営実務」でもう一度この分野の学習をすることになる。
業務的意思決定
ある意味数学的なセンスを問われる分野。数学が苦手だった人にはキツイかも。
またその場で対応力が求められる問題も多いので、短答においては本番で出題された場合、苦手な人は最悪切ってしまっても良いかも。
もちろん、問題集・答練で出題された解法パターンの理解だけは最低限やっておく必要があるが。
設備投資意思決定
短答・論文共に出題可能性高し。
原価計算編の勉強法と同じく、図を書いて解法パターンを体に覚えさせる必要あり。
また、タックス・シールドの処理漏れについては要注意。
問題を繰り返し解けば、必ず本番で出題されても解けるようになる。
管理会計論-理論対策について
先ほどお話したとおり、理論の学習内容については計算の勉強をしている段階で、同時並行的にある程度身についており特別、理論対策のための勉強はする必要は低いです。
予備校の理論問題集を解き、間違えた論点を中心にテキストの読み込みを行い、再度問題集の解き直しを行って、全部の問題を完璧に正答できるようになればそれで十分です。
なお理論の対策ですが、原価計算基準を読んだほうが良いと主張している人もいるみたいですが、特に必要ありません。
あんなかたっくるしい文章の羅列、読んでも頭に入りそうにないですよね。
私も受験時代、頑張って読んでみようとしたのですが、3秒で投げました。
テキストを読み込み、予備校で配られる理論問題集を解けるようになれば、それで十分です。
また、もし予備校で配られる理論問題集だけでは不安なら、以下の問題集を解いておくと良いでしょう。
(重ね重ねの注意ですが、必ずちゃんと確認して、最新版を購入するようにしてください、安いからといって古い問題集を使っては駄目です)
私は、当時は上記の問題集を解いている時間がなかったため、全く手を付けることができませんでしたが、追加で解くとしたらこの問題集を解いていたでしょうね。
ご自身の勉強状況を見ながら取り掛かるようにしましょう。
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また、以下の記事で短答式試験に短期合格する勉強法を科目別にまとめていますので、こちらもご覧ください。