こんにちは、現役公認会計士の植村拓真(うえむら たくま)です。
監査論は短答科目の中で最もボリュームが少ない科目です。
予備校の講義も、短答科目の中では最も始まるのが最も遅い科目です。テキストもせいぜい1~2冊程度で収まる範囲です。
ただし、それが直ちに高得点を取りやすいということにはなりません。むしろ、監査論の難易度は高いです。
これは、監査論が実務と直結している科目であるがゆえに、実務経験のない受験生にとっては学習内容がとっつきづらく感じるためですね。
分析的実証手続とか、詳細テストとかの用語を学んだところで、実務では実際にどんなことをしているのか、全くイメージがつかないと思います。
正直、座学だけでは限界があるので仕方ないです。私も受験生時代はちんぷんかんぷんでした。
実務で実際に自分で手を動かして、やっと完璧に理解できたくらいです。
だから監査論を学び始めて、講義の内容が意味分からないとか、テキストに書いてあることが全く理解できないとかいうことになっても自分を責める必要はありません。
むしろ、それが普通だと思うようにしましょう。
ただ、それでも知識のインプット・アウトプットはある程度のレベルにまで持っていかなければ試験に合格できないので、そこは割り切って学習しなければなりません。
また、合格後の就職先を監査法人だと決めている場合、最も実務で役に立つのが監査論の知識です。
試験科目のうち、監査法人で役に立つ科目の知識の割合は、
- 監査論:7
- 財務会計論:2
- その他の科目:1
くらいに認識しておきましょう。
監査論はそれくらい実務に入ってからも重要な知識になります。当然ですね、公認会計士の独占業務が会計監査ですもんね。
というわけで、ボリュームが少ないからといって油断せずに、気合入れて勉強していきましょう。
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監査論はインプットに時間をかける&積極的に質問する
監査論の基本的な勉強法のプロセスが、他の記事でも解説しているとおり、こんな感じです。
倍速の講義音声聞く・テキストのザクッとした理解による短時間のインプット、テキストの全体像の把握
↓
問題集解く
(問題に悩む・解くのに時間はかけすぎないで)
↓
解説・テキストの確認、解法の理解
↓
復習のタイミングに気をつけて後日、問題集を解き直す
↓
上記のプロセスを、問題集をすべて自力で解けるまで繰り返す
(問題集の問題に全部○マークを付せるまで)
ただし、前述のとおり、監査論の学習内容は初学者、実務についたことのない受験経験者にとって、非常にとっつきづらいものです。
倍速の講義音声を1回だけ聞いて、テキストをザクッと読んだだけでは、全く要領を得られないかもしれません。
テキストの内容が抽象的過ぎて「で、結局何が言いたいの?」という状態になると思います。
だから、監査論についてはインプットの段階で時間をかけても構いません。
自分の中で納得できるまで、講義音声を聞き直したりテキスト読み込んだりしましょう。
監査論はボリュームが少ないので、インプットに時間をかけすぎても致命的ミスにはつながりません。
また、講義音声やテキストを使っていて分からないことが出てきたら、積極的にその都度、予備校の講師に質問しましょう。
テキストの内容が抽象的過ぎるので、実務では具体的にどのようなことをしているのか教えてもらえれば、かなり学習している内容についてイメージしやすいです。
監査論は学習内容が分かりづらい分、質問をするなどして、インプットの段階でなるべく自分の腑に落ちるまで理解しておいたほうが良いということですね。
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監査基準委員会報告書の読み方
監査基準委員会報告書ですが、これはきちんと読み込んでおいたほうが良いです。
監査論の問題はほぼこの委員会報告書から出題されるので、委員会報告書をマスターしておけば他の受験生に大きな差をつけることができるからです。
過去問や予備校の答練を眺めていたら分かると思いますが、ほとんどの問題がこの委員会報告書を少し改変して作成されています。
であれば、委員会報告書を完璧にしておけば、監査論で怖いものなしになれるわけです。
また、予備校で配られるテキストでは、試験範囲が十分に網羅できていない可能性があります。
私のときはそうでした。予備校によって違うと思いますが、通っていた最大手の予備校のテキストがそんなできだったので、他の予備校でも当てはまるかもしれません。
「もっとちゃんとしたテキストを作れよ!」
とか
「テキストだけで勉強が完結できるようにしろよ!」
と当時は予備校に苦情を言いたかったのですが、愚痴を言っても仕方がありません。
テキストの欠陥をカバーするためにも、委員会報告書の読み込みが必要ということですね。
※注意:あなたが通っている予備校のテキストがきちんと試験範囲を網羅できていたり、予備校の講師が独自にきちんとしたレジュメ等を配布してくれているのなら、そちらをベースに勉強しても大丈夫です。
その場合、委員会報告書を読み込むかどうかは、ご自身の判断にお任せします。
で、この委員会報告書。市販されている法令基準集を使って読み込めば大丈夫です。
ただ、分量が非常に多いです。一度さらっと読むだけでも、かなりの時間がかかります。
とはいえ、読んで実際に学習した内容を、強い記憶にして自分の中に残すためには、繰り返しの復習が必要です。
しかし、この膨大な量の委員会報告書を繰り返し復習することは現実的ではありません。
そこで、私が取っていた方法が「試験で出題されやすそうな箇所に絞って読み込む」ことでした。
たとえば、以下のような箇所です。
(監基報240 財務諸表監査における不正)
46.監査人は、収益認識に関係する不正による重要な虚偽表示リスクがないと判断したときは、その理由を監査調書に記録しなければならない。
こういう箇所は「その理由を監査調書に記録しなければならない」の部分を「その理由を監査調書に記録する必要はない」といった風に、試験で改変されてひっかけとして出題される可能性が高いです。
ですので、マーカーを引く、もしくは重要だとわかるようなマークを付けるようにしていました。
そして、一度すべての委員会報告書を読み終わったあとは、マーカーを引いた部分のみを読み直すようにしていました。
逆に、委員会報告書の中でも例示の箇所は、試験ではほぼ出ないので読み飛ばしていました。
たとえば、以下のような箇所です。
(監基報240 財務諸表監査における不正)
A3.不正な財務報告は、以下の方法により行われることがある。
- 財務諸表の基礎となる会計記録や証憑書類の改竄、偽造又は変造
- 取引、会計事象又は重要な情報の財務諸表における虚偽の記載や意図的な除外
- 金額、分類、表示又は開示に関する意図的な会計基準の不適切な適用
こういうのは読んでも覚えられませんし、試験でも出題可能性は非常に低いので、思い切って読み飛ばしていました。
しかし、上記のような工夫を凝らしても、委員会報告書の読み込みは相当な時間がかかります。
そして、読んだ内容をきちんと覚えるためには繰り返し、何度も読み込まなければなりません。
学習した内容は、何度も何度も繰り返さなければ身に付かないからです。
一度サラッと読むだけでは時間の無駄です。そうなるくらいならやらないほうがマシです。
ですので、試験本番まで時間がないという場合はむしろ、委員会報告書には手をつけないほうが良いです。
テキストベースの勉強をするしかありません。
ただやはり、監査論で万全を期したり、高得点を狙いに行こうとしたりする場合は委員会報告書の読み込みは必要です。
監査論のおすすめの問題集
私が受験生のときは、予備校からちゃんとした問題集は配られませんでした。まともな問題は答練のみです。
正直、信じられない対応だと思いましたが、これまた愚痴を言っていても仕方ありません。
というわけで、もしあなたも予備校から十分な問題集が配られなかった場合、ご自身で問題集を取り揃える必要があります。
答練の問題を解くだけでは、絶対に足りません。もっと多くの問題をこなす必要があります。
それではおなじみの、オススメの問題集紹介のコーナーです。
以下をこなせば、十分試験にも対応できる実力が付くでしょう。
- 公認会計士 ベーシック問題集 監査論 (公認会計士 短答式試験対策シリーズ)
- 公認会計士 アドバンスト問題集 監査論 (公認会計士 短答式試験対策シリーズ)
- 東京リーガルマインド 資格のLEC 公認会計士試験 短答式試験対策 一問一答問題集 監査論
問題の質は言うことなしです。
もし、これらの問題集を解いても不安だという場合は、状況に応じて適宜追加の問題集を取り揃えるようにしましょう。
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また、以下の記事で短答式試験に短期合格する勉強法を科目別にまとめていますので、こちらもご覧ください。