こんにちは、現役公認会計士の植村拓真(うえむら たくま)です。
今回は、租税法の勉強法について解説します。
租税は大きく、法人税法、所得税法、消費税法に分かれます。
ボリュームとしては、
- 法人税法:5
- 所得税法:3
- 消費税法:2
といったところでしょうか。科目全体のボリュームも多く、非常に骨の折れる科目となっています。
本試験での計算と理論の配点比率は6:4程度ですが、勉強の中心は計算です。
なぜなら、まず計算のボリュームが膨大すぎるということと、租税法の理論は計算を学んでいるうちに、理論で必要となる知識が勝手に身に付いていくからです。
まずは、計算を完璧にして理論は後回しにしましょう。
しかし、この計算が非常に厄介です。
なぜなら、財務会計論の簿記や管理会計論の計算のように、一度マスターしてしまえば長期間記憶が持続するというものではなく、租税法の計算は短期間のうちに反復しないとすぐに忘却の彼方にいってしまうからです。
これは租税法で覚えるべき公式、規定、小数点の取り扱い方などが、非常に細かいうえに量も膨大で記憶が追いついていかないからです。
また、公式で使用される数値もなんらの根拠がなく、政策的な意味合いで決められているため丸暗記するしかなく、理解して記憶するということができません。
一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定における法定繰入率についても、
- 卸売業および小売業:1000分の10
- 製造業:1000分の8
みたいに、全く数値の根拠がなく、丸暗記するしかありません。
このことも、租税法で学習した内容が短期で忘れやすくなっている理由の一つになっています。
ということは、租税法の攻略法はただ一つ。
短期間に繰り返し、繰り返し反復して、記憶が強いうちに本試験に突入することです。
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租税法の勉強を始めるべきタイミング
租税法は予備校の講義でも割と早い段階でスタートします。
予備校によっては監査論より早くスタートするかもしれませんね。
もちろん、あなたがその予備校のカリキュラムに合わせる必要はありません。
ご自身の適切な学習タイミングを見極めて、好きなときに倍速の講義音声を聞き始めれば良いです。
ただ、このタイミングを見誤ると、試験合格が非常に厳しいものとなってしまいます。
租税法の勉強タイミングは本当に気をつけなければなりません。
というわけで、租税法の勉強を始めるべきタイミングを3パターンに分けて考えてみます。
パターン1:12月短答前から勉強を始めるパターン
3つのパターンのうち、最も早いタイミングで勉強を始めるパターンですね。大半の予備校のパターンもこれだと思います。
短答に絶大なる自信がある人はこのパターンを採用しても良いと思います。
しかし、忘れないで欲しいのは「租税法は短期間のうちに、繰り返し反復しなければ身につかない」ということ。
講義音声だけ聞いて終わりにするのは最悪だと思います。
それだけで終わりにしてしまうと、1ヵ月後、2ヶ月後に租税法の勉強を再開したとしても100%、何も覚えていないです。特に租税法は記憶に残りづらい科目ですので。
12月短答前から勉強を始めて、それなりの意味を残したいというのであれば、講義を聞いただけで終わりにせず、テキストを繰り返し読んだり、問題集も繰り返し解いたりしなければ意味がありません。
その余裕が間違いなくあるという人は、12月短答前から勉強を始めても良いと思います。
ただ、私は短答式試験の前にそれほどの時間的余裕がある人は見たことがありません。
短答の科目の勉強もままならないのに租税法の勉強に手を出すとか、間違ってもやってはいけません!
租税法の勉強の前に、他にもっとすべきことがあるはずです。
12月短答前に勉強を始めていい人は、短答式試験の合格に圧倒的な自信があり、租税法の勉強にもかなりの時間をかけることができる人だけです。
それ以外の人は、租税法の勉強なんて始めてはいけません。
12月短答前に勉強を始めるなら、徹底的に勉強してください。その余裕がなければ、手をつけてはいけません。講義音声すら聞いてはいけません。時間の無駄です。
中途半端に手を出すことがもっとも自滅行為に近いです。
というわけで、このパターンは私が最もオススメしないパターンです。
そして、多くの予備校がこのパターンを採用しているため、思考停止でとりあえず講義を受けに行こうと考え、この罠に引っかかる『センス』ない受験生から失敗していきます。
パターン2:12月短答後から勉強を始めるパターン
12月短答の合格を確信して、12月短答後から本腰入れて勉強を始めて講義音声も最初から集中的に聞き始めるパターンですね。
理想的なパターンです、文句ありません。
8月論文式試験まで時間的余裕もあり、焦りやプレッシャーも感じず、のびのびと租税法の勉強に集中できると思います。
繰り返し、反復して勉強する余裕も十分にあると思います。
私が最もオススメするパターンですね。短期合格を目指すうえでも、できるだけこのパターンを取りたいものです。
ただ、一つアドバイスしておくと、長い期間をかけて租税法の勉強をダラダラ続けるのは禁物です。
学習内容が特に身に付きにくい科目だからこそ、短期間のうちに何度も繰り返して反復練習するのが最も効率的です。
12月短答が終わったら、一定期間は租税法を集中して勉強して、他の科目は知識が抜け落ちないように軽くメンテナンスするような方針を採るとうまくいくでしょう。
なお、12月短答に受かっている見込みがなかった場合でも、勉強の進捗を見て租税法の勉強を進めておけば、5月短答後に楽です。
しかし、5月短答に合格するための勉強を最優先にするようにはしてください。勉強を始めるのは「もう5月短答には絶対合格できるぞ!」とある程度強く確信できるようになってからです。
パターン3:5月短答後から勉強を始めるパターン
もっともしんどいパターンです。ちなみに私もこれでした。
ただ、パターン3を取らざるを得なかったとしても、たとえ5月短答が終わった時点で租税法が白紙の状態でも、諦めなければ絶対に論文式試験も合格できます。
私が身をもってそれを証明しています。講義音声も5月短答後から1から聞き直しました。
パターン3の強みは、冒頭でお話した租税法の攻略法「短期間に繰り返し反復して、記憶が強いうちに本試験に突入する」を3つのパターンの中で一番忠実に実現できるということです。(というより、そうならざるをえない)
このパターンでは、限られた時間の中、租税法の他にも経営学の勉強、他の科目の論文用の勉強もこなさなければならず、大変なのですが、やはり一定期間は租税法に全力投球して、短期間のうちに繰り返しの反復練習をするようにしましょう。
焦りますし、プレッシャーもそれなりにありますが、前向きな力に変換できれば、むしろ勉強の効率的にはプラスになります。
サボりたい気持ちも少なくなります。
いくら租税法の範囲が膨大だからといっても、これまでお話してきた正しい勉強法を実施していただければ、1ヶ月~1ヶ月半程度で試験範囲はすべてカバーできます。
あとは答練をこなしたり、総仕上げをしたりするだけで良くなります。
いつまでも租税法が仕上がっていない状態だと今後の精神衛生上も良くないので、5月短答が終わり次第即取り掛かるようにしましょう。
ちなみに、私は5月短答が終わったその日の夜から、租税法の勉強を始めていました。3ヵ月後にはすぐ論文式試験が控えているので、休んでいる暇なんてありません。
短期合格を目指す方は、それくらいは何なくこなす必要がありますね。しんどいんですが、短期合格のためなら仕方ありません。
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計算は愚直に繰り返す
他の記事でも何度もお話しましたが、計算をマスターするにはとにかく短期間のうちに
繰り返し、
繰り返し、
繰り返すこと!
これしかありません。
そして、何度も繰り返しても、時間が経てば租税法の知識は頭から抜けて行きます。
ですので、短期間の反復を試験本番からそう遠くない日に実施して、記憶が強いうちに本試験に突入するということが非常に重要になってきます。
繰り返しになりますが、租税法の勉強はタイミングが一番重要です。試験勉強の初期段階で租税法の勉強を中途半端にやるほど、愚の骨頂はありません。
さて、租税法の計算の勉強においては、全体像を意識しながら勉強することが重要です。
たとえば、
法人税だったら「今、自分は別表4のどの部分の勉強をしているんだろう?」とか。
消費税だったら「今、自分は課税売上を算定しているのか?それとも課税売上割合の算定をしているのか??」とか。
全体像を意識しながら個別の論点を勉強していけば、答練や本試験の問題にも戸惑うことなく対応できるようになります。
ちなみに、法人税については、計算過程はキレイに書ける必要はありません。修了考査では書ける必要があるのですが、計算結果だけキッチリはじき出せれば十分です。
留保や社外流出も特に気にする必要なしです。加算、減算の計算がしっかりできれば十分です。
勉強を始めたばかりの時期はとっつきづらく、身に付きづらい租税法の計算ですが、その一方でやればやるほど成績も伸びて行きます。
努力が報われやすい科目なんですね。試験本番でも意味不明な問題が出題されることは少ないですから。
覚えるべきことが多い一方で、きちんと覚えるべきことを覚えていくことができれば、ちゃんと得点に結びつきます。
なお、問題集については、数多くの種類の問題集をこなす必要はありません。
予備校で配られる問題集を繰り返して、同じ問題集を何度も何度も解き直して、確実に正答できるようになればそれで十分です。
理論はやりすぎないこと
租税法の理論ですが、ここはあまり時間をかけなくて良い領域です。特に、5月短答合格組は時間をかけちゃいけません。最低限で十分です。
前述のとおり、理論は計算を学んでいるうちに、答案を書くために必要な知識が勝手に身に付いていくからです。
そして、それ以上の対策がしづらいという側面もあります。
租税法においては、理論の勉強はしっかりやっていっても報われないことが多いです。他の受験生もそこまで理論の勉強をしてきませんからね、費用対効果が悪いですから。
時間をかけすぎても仕方がないのです。予備校で配られる理論のテキストも完璧にする必要はありません。読み込む必要すらないかもしれません。
理論は最低限、答練や過去問の解答を見て論証例や答案の書き方を把握して、計算で学んだ知識をうまくアウトプットできるように訓練すれば十分です。
あとは、答練を解く際に基準集を参照して、どの条文がどこに書いてあるかを大まかに把握できるようになれば大丈夫ですね。
以上が、租税法の勉強法でした。
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また、以下の記事で論文式試験に短期合格する勉強法を科目別にまとめていますので、こちらもご覧ください。