こんにちは、現役公認会計士の植村拓真(うえむら たくま)です。
私は公認会計士試験に、大学在学中のときに一発合格しました。会計士試験の最終関門たる論文式試験には、大学3年生の時に合格いたしました。
合格率が5~10%という異常に狭き門である短答式試験に比べたら、論文式試験の合格率は30%であり、まあ短答式試験よりは合格しやすいです。
しかしながら、論文式試験は人によってはものすごくハードルの高い試験です。
そう、5月の短答に合格した人のことですね。5月短答合格の人は、8月の論文式試験まで3ヶ月しか勉強する期間を取れないので、本番までめちゃくちゃタイトな勉強をこなさないといけないんですよね。
かくいう私も5月短答合格組だったので、3ヶ月という短い時間で論文の勉強を仕上げなければいけませんでした。
他の受験生は、短答が終わる前から租税法や経営学などの論文の勉強を始めている人もいるわけですが、私の場合は短答の勉強だけで手一杯で、短答前に論文の勉強をする余裕なんて一切ないわけで。
5月短答が終わってから論文の勉強を始めた時点で、本当に、全く論文の知識はゼロの状態でした。
しかし、その状態からでも3ヶ月間うまく勉強を進めることで、無事に論文式試験にも一発合格できました。
というわけで、そのためにどんな勉強法をやっていくべきかを、これから論文の科目別にお話ししていきますね。
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論文式試験の全体像
論文式試験は、その名のとおりすべて記述式の問題です。
問題の内容も、短答式試験のようなマークシートで答えれば済む話ではなく、
- 用語やキーワードを正確に書かせる
- 制度の定義を答えさせる
- 一定の事例を出題する
- それに対する見解を述べさせる
など
専門家になるのにふさわしい知識を持っているかを試してきます。また、企業法に至っては、しっかりとした文章構成までも要求してきて、長文の論述を書かせるような問題が出題されます。
つまり、論文式試験では、短答式試験のように与えられた文章の正誤を判断する能力があるだけでは不十分で、自分の力でゼロから正しい解答を書き上げていく能力が必要になるのです。
このような論文式試験を、短期間の勉強で突破するためのポイントとして、以下の3つがあります。
- 暗記すべき箇所をターゲッティングする
- ターゲッティングした箇所の暗記を素早く終わらす
- 書く量をできるだけ減らす
順番にお話ししてきます。
暗記すべき箇所をターゲッティングすること
ゼロから正しい解答を書き上げるためには、 解答を書き上げるための材料、すなわち専門用語や制度の趣旨など、事前にテキストやレジュメなどから暗記しておかなければなりません。
十分に暗記できていない状態で本試験に挑んだところで、中途半端な解答しか書けず爆死するだけです。
とはいえ、暗記にはものすごく時間がかかります。本番まで限られている時間の中で、テキストに書いてあることすべてを丸暗記しようなんて、とてもじゃないですができません。
やりたい人はやってみてもいいですが、おそらくすぐに挫折することでしょう。そこで、暗記すべき箇所を事前に絞っておく、すなわちターゲッティングしておいて暗記する量を必要最小限にすることが必要になってきます。
ターゲッティングした箇所の暗記を素早く終わらすこと
暗記すべき箇所のターゲッティングができたら、あとは絞った箇所の暗記だけにひたすら集中しましょう。
ターゲッティングした箇所にマーカー引いて、何度も繰り返し眺めたり、暗唱したり、場合によっては声に出して覚えるなどの工夫をして、とにかく素早くその箇所の暗記を終わらせることです。
論文試験の勉強は、暗記することだけではありません。計算のメンテナンスもしないといけないし、租税法や経営学の勉強も、同時並行で進めていかなければならないのです。答練を解いたりもしないといけませんからね。
そう考えると、暗記だけに時間をかけていてはいけません。うまく工夫して、暗記にかける時間は最小限にしていきましょう。
書く量をできるだけ減らすこと
書くという勉強は、無駄に時間がかかります。特に、論文式試験の勉強でやってはいけないことが、用語や定義などを書いて覚えようとすることです。
文章を書いている暇があったら、何度も繰り返し読んで覚える方が効率的な勉強です。読むほうが早くできますからね。
答練も真面目かつ丁寧に全部書こうなんて、そんな馬鹿な真似をしてはいけません。
ただでさえ時間が足りないのに、解答で要求されているような長ったらしい文章を一から全部丁寧に書いてるなんて、そんな時間もったいなさ過ぎです。
答練の解答は、書くべき要素を箇条書きにして、簡単な解答構成をやってしまえばもうそれで十分です。それなのに、無駄に全部書こうとしているから時間が足りなくなるんですよ。
さらに詳しい論文式試験の勉強法については以下の記事で説明していますので、こちらもあわせてご覧ください。
それでは、論文の科目別の勉強法について解説します。
会計学の勉強法
会計学は、短答科目の財務会計論と管理会計論が一緒になった科目です。
とはいえ、論文式試験の当日、午前中に会計学<1>として管理会計論の試験を受けて、午後に会計学<2>として財務会計論の試験を受けるので、実質的には別の科目なんですけどね。
勉強する内容は計算と理論に分かれていますが、短答式の時とは違って、理論の配点の方が大きいです。
計算の対策としては、短答のときに使っていた問題集や答練を使って、定期的にメンテナンスする程度で十分でしょう。
理論の対策では、さっきお話ししたように、暗記すべき箇所をターゲッティングして、ターゲッティングした箇所を効率的に暗記できるよう工夫するのが大事です。このとき、キーワードを意識して覚えるようにすると、早く暗記できます。
会計学の勉強法は、こちらの記事でも詳しく解説しています。
企業法の勉強法
企業法では、大問が2問出題されます。解答用紙として、ほぼ白紙の用紙が配られるのですが、その解答欄を全て埋めるくらいの勢いがなければ合格点は取れないでしょう。
他の論文科目では、多少文章がめちゃくちゃでも、キーワードを書いてさえいれば部分点をもらえる場合がありますが、企業法はしっかりと答案構成をして、ちゃんとした論述を書く必要があります。
問題集や答練の問題や解答例を見て、大体の出題パターンと、パターン別の答案構成ができるように、普段から訓練しておきましょう。
なお、条文や用語の定義などは、試験本番の時に配られる法令基準書に載っていることが多いので、普段の勉強のときに暗記しておく必要はありませんが、定義の趣旨などは基準集に載っていないので、きちんと暗記しておく必要があります。
また、普段から条文を引く練習もしておきましょう。条文を何度も引いているうちに、必要な条文を探すスピードも早くなってきますのでね。
企業法の勉強法は、こちらの記事でも詳しく解説しています。
監査論の勉強法
監査論は大きく分けて、理論中心の問題と実務中心の2つの問題が出題されます。
理論中心の問題に対応するには、普段からテキストに書いてあることを理解したり暗記しておけば事足ります。
しかし、実務中心の問題に対応するのは、結構難しいです。実務経験のない受験生にとっては、少しハードルの高い問題が出題されるからです。
中々こなれた答案を書くのは難しいのですが、普段講義で聞いたことや、テキストに書いてあったことから想像力を働かせて「普通に考えて、多分こうだろうな」という解答が書ければそれで及第点でしょう。
というか、ちゃんとした答案が書ける受験生も少ないと思うので、まあ、そこまで神経質になる必要はありません。
私が通っていた予備校の講師も「監査論では受験生みんな、好き勝手にウソばっか書いてるからね」って言ってましたw
監査論の勉強法は、こちらの記事でも詳しく解説しています。
租税法の勉強法
租税法の出題範囲は、大きく分けて法人税法・所得税法・消費税法の3つです。そしてその中でも、法人税法の勉強が最も大きなウエイトを占めます。
予備校でも、租税法の講義は短答式試験の前から始まることが多いですし、そのペースに合わせて短答前から勉強を始めておくのが理想的ですが、短答の勉強だけで手一杯の場合は無理して租税法の勉強に手をつける必要はありません。
租税法の計算の勉強では、複雑な公式や小数点の処理など、非常に細かい部分の暗記が要求され、それらのことを覚えるだけでも一苦労です。
しかしその一方で、暗記してさえいれば解けるような問題が多く、慣れたら簡単です。というわけで、租税法は努力すればするほど点数が返ってくる科目と言えます。要は、努力が報われやすい科目なんですよ。
また租税法には理論問題もあるのですが、まあ、ほぼ計算の勉強だけやってれば十分だと考えてもらえれば良いです。何故なら理論問題への対応力は、計算の勉強をやっているうちに自然と身に付いていくからです。
理論の対策としては、普段答練を解く時や、過去問をチラッと眺めたときに、問題の出題形式や答案の書き方を見ておけば十分対応できるでしょう。
何にせよ、租税法の理論の勉強にはあまり時間をかけなくていいです。
租税法の勉強法は、こちらの記事でも詳しく解説しています。
選択科目(経営学)の勉強法
論文式試験には選択科目があって、それぞれ民法、統計学、経済学、経営学の4つの科目から一つ選ぶのですが、ほとんどの受験生が経営学を選択します。
そして、私も経営学を選択するのをオススメしておきます。なんといっても、科目のボリュームが少ないからです。ボリュームが少ない=必要な勉強時間を減らすことができるわけですね。
経営学を選択しておけば、仮に5月の短答が終わってから勉強始めても、十分間に合うくらいです。それほどボリュームが少ないのです。他の選択科目だと、そうはいきません。短答前からしっかりと勉強しておかないと間に合いません。
なんせ、ボリュームが多いですからねw
というわけで、他の選択科目について、大学などで専門的に勉強していたとか、特別な理由がない限りは経営学を選択しておきましょう。
経営学は計算と理論に分かれるのですが、どちらも難易度は低いです。計算はいくつか公式を暗記して、その公式を問題に当てはめて答えを出していくだけです。理論も予備校で配られるうっすいテキストを一通り通読して、あとは問題集や答練でアウトプットしていけば良いです。
本気を出せば一週間ぐらいで合格レベルにまで持っていけるほどの軽い科目です。癒やし科目ですね。
経営学の勉強法は、こちらの記事でも詳しく解説しています。
終わりに
いかがだったでしょうか。以上が論文式試験の勉強法でした。
5月短答に合格した人は特に、論文式試験までの期間がたった3ヶ月しかなくて、もしかしたら「今年は論文の合格までは無理だろうな・・・」と思っている人がいるかもしれません。
しかし、ここで私はそんな人に「あきらめんな!」と喝を入れてやりたいところです。私も実際、ほぼゼロの状態から3ヶ月で論文式試験に合格しましたからね。
うまく勉強を進めていくことができれば、論文の勉強期間が3ヶ月でも、十分に合格可能性はあります。
センスのない人は論文式試験の勉強を1年以上続けていても、2回も3回も落ちてたりするのですが、私に言わせれば勉強のやり方下手くそ過ぎだろって感じです。
短答式試験とは違って3人に1人は合格できる試験なのですから、ここまで来たら、どうせなら一発で合格しましょうよ。短答合格からの論文一発合格が一番きれいです。