こんにちは、現役公認会計士の植村拓真(うえむら たくま)です。
公認会計士は企業の会計・監査のプロフェッショナルであり、医師・弁護士と並ぶ三大国家資格の一つとして数えられています。
こう聞くと、限られた人にしかなれない職業だと思われるかもしれませんし、実際に世間的から公認会計士試験の難易度はとても高いと思われています。
しかしながら、公認会計士試験を突破した経験者として語らせていただくと、公認会計士試験は世間的で言われているほど難しくありません。実際に試験を受けてみて、思ってたより簡単だったと感じました。
「あなたは受かったからこそ言えるんだ」と思われたかもしれませんが、私が実際に公認会計士試験の勉強をしてきて、そして周りのたくさんの受験生を見てきたうえで、確信を持って話せることです。
というわけで、本記事を読めば、あなたにも「そうなんだ、じゃあ自分も公認会計士試験に合格できそうだな!」と思ってもらえるでしょう。
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公認会計士試験の難易度と特徴
それではまず、公認会計士試験の大まかな内容について見ていきましょう。
公認会計士試験の試験科目は全部で9科目
公認会計士試験の科目は以下の9科目で、下から4科目は選択科目です。
試験科目 | 内容 |
財務会計論 | 企業の決算書の作り方を学ぶ |
管理会計論 | 経営者に役立つ会計理論を学ぶ |
企業法 | 企業周辺の法制度について学ぶ |
監査論 | 公認会計士の独占業務である会計監査について学ぶ |
租税法 | 法人税法・所得税法・消費税法について学ぶ |
経営学(選択科目) | 企業経営に関する理論について学ぶ |
統計学(選択科目) | 標準偏差や回帰分析などの統計的な手法について学ぶ |
民法(選択科目) | 国民生活に関して定めた法律について学ぶ |
経済学(選択科目) | ミクロ経済やマクロ経済などの経済理論を学ぶ |
※租税法及び選択科目は論文式試験のみ
選択科目は一つの科目だけを選んで受験すれば良いので、勉強する科目は実質6科目だけです。いずれの科目でも、受験生が専門家となるにふさわしい知識を備えているかどうかが問われます。
各試験科目の詳しい解説については、こちらの記事をご覧ください。
受験のハードルが低い国家試験
公認会計士試験の大きな特徴として挙げられるのが、国家試験だけど受験のハードルは低いことです。
たとえば、司法試験の受験資格は、法科大学院を修了しなければ与えられませんし、医師国家試験の受験資格は、医学部を卒業していなければ与えられません。
しかし、公認会計士試験は特段の受験資格がなく、誰でも受験できます。年齢制限がないため中学生でも受験できますし、定年を迎えた年配の方でも受験できます。
受験のハードルの低さは、受験生にとって魅力的です。そして、公認会計士試験の難易度を下げている理由の一つだと思います。
史上最年少の16歳で公認会計士試験に合格した方もいます。驚きですよね?高校1年生くらいの年代でも合格できます。
ちなみに、私が16歳の頃は、部活の練習に励んだり友達とカラオケに行ったりしてました。
みなさんそんなものだと思います。
各試験科目の難易度も言うほど高くない
公認会計士試験の科目は、先ほどお話したとおり9つです。各試験科目の勉強で扱う学習内容も専門的ではありますが、難解すぎるレベルの話でもありません。
講義を受けて、問題集を解いて、テキストで復習すれば、普通に理解できるレベルのものばかりです。
あと、たまに「公認会計士は数字を扱う職業だから、試験勉強でも高度な数学の知識がいるのでは?」と思っている方がいますが、そんなことはありません。
たしかに、管理会計論の勉強で数学の知識を使う機会がありますが、連立方程式や一次関数の話が分かっていれば十分に対応できます。
ただ、選択科目で統計学や経済学を選ぶと、微分や積分など難しい数学の知識が必要です。
とはいえ、ほとんどの受験生は難易度の低い経営学を選ぶので、あまり関係のない話でしょう。
学習量の多さが難易度を上げている
ただ、一つ覚悟を決めておいてほしいのは、試験範囲が膨大である点です。
たとえば、私の通っていた予備校では、財務会計論の簿記のテキストだけでも12冊あり、テキストの勉強と並行して同じく12冊もの問題集を解かなければなりませんでした。
他の試験科目も、財務会計論ほどではありませんが、少なくない学習範囲の知識をまんべんなく覚えなければなりません。
つまり、学習量が半端なく多く、それに伴って勉強時間も相当程度かかってきます。
一つの業界のプロフェッショナルになろうとするわけですから、それくらいのハードルは越えてきてくださいね、といった金融庁のメッセージかもしれません。
ただ、先ほどお話ししたとおり、学習する内容自体は人並みに努力していれば理解できるようなものばかりで、難易度もあまり高くないです。
難易度低~中の学習内容が大量にあるイメージでしょうか。
まとめると、公認会計士試験は学習量がちょっと多いくらいで、勉強する内容はそんなに難しいわけではなく、受験するためのハードルも低いです。
公認会計士試験に合格するには、天才である必要はなく、コツコツ努力できる人であれば誰でも合格できます。
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公認会計士試験の合格率はどれくらい?
続いて、公認会計士試験の合格率について見ていきましょう。
公認会計士試験は、一次試験となる短答式試験が年に2回(12月と5月)あり、二次試験として短答式試験に合格した人だけ受験できる論文式試験が年に1回あります。
細かい数値は年によって変わりますが、12月に実施される第Ⅰ回短答式試験の合格率が約10%で、5月に実施される第Ⅱ回短答式試験の合格率が約5%です。数値だけみれば、めちゃくちゃシビアな数値に見えますね。
受験経験者の私の体感としても、かなり狭き門だと感じました。1クラスに30人いるとしたら、第Ⅰ回短答式試験では3人しか合格できないわけですし、第Ⅱ回短答式試験に至っては1~2人しか合格できないくらいの確率ですからね。
一方で、論文式試験の合格率は約30%です。論文式試験の合格率は、短答式試験よりも高いですね。割合的にも3人に1人が合格できる試験です。短答式試験と比べたら、合格しやすい試験だと言えるでしょう。
とはいえ、論文式試験を合格している人は全員、合格率の低い短答式試験を突破してきた人たちであるわけで、母集団のレベルもかなり高いです。だから、しっかりと論文式試験の対策もやっておかないと突破できません。
参考までに、平成30年試験の合格率に関するデータも載せておきます(願書提出者数・合格者数は公認会計士・監査審査会のHPより)。
<平成30年第Ⅰ回短答式試験>
- 願書提出者:8,373人
- 合格者数:1,090人
- 合格率:約13%
<平成30年第Ⅱ回短答式試験>
- 願書提出者数8,793人
- 合格者数:975人
- 合格率:約11%
(合格率が11%近くになってますね!平成29年までの第Ⅱ回短答式試験では、合格率は5%程度で推移していたのですが、受験者数の増加の影響を受けて、金融庁も合格率を上げたのかもしれません。)
<平成30年論文式試験>
- 受験者数:3,678 人
- 論文式試験合格者数:1,305人
- 合格率:約35%
なお、全体を通しての願書提出者数が11,742 人(第Ⅰ回短答式試験と第Ⅱ回短答式試験のいずれにも願書を提出した受験者を名寄せして集計)に対して、最終的な合格者の数(論文式試験合格者数)が1,305人です。
公認会計士試験の合格率は約11%ということになります。
最新(令和3年・2年)分の公認会計士試験の合格率を紹介しておきます。
令和3年 | 令和2年 | |
願書提出者数 | 14,192人 | 13,231人 |
短答式試験受験者数 | 12,260人 | 11,598人 |
短答式試験合格者数 | 2,060人 | 1,861人 |
論文式試験受験者数 | 3,992人 | 3,719人 |
最終合格者数 | 1,360人 | 1,335人 |
合格率 | 9.6% | 10.1% |
※令和3年試験の短答式試験免除者は 1,932 人。
※令和2年試験の願書提出者数は、第Ⅰ回短答式試験、第Ⅱ回短答式試験のいずれにも願書を提出し た受験者を名寄せして集計したもの
引用:令和3年公認会計士試験の合格発表の概要について
公認会計士試験の合格までに必要な勉強時間
さて次に、公認会計士試験の合格に必要な勉強時間について見ていきましょう。
あくまでも一般的な目安になりますが、早い人で3,000時間です。長く見積もっても4,000時間確保できれば合格レベルに達します。一見、3,000時間だとかなり膨大な時間に思えますよね。あなたも「そんなにかかるのか」と思われたかもしれません。
しかし、落ち着いて考えてみると、そんなに驚くほどの数字ではないと気づきます。たとえば、普通のサラリーマンであれば、1日で7時間以上は働いていますよね。そして、3,000時間を7時間で割れば、428日(1年と2ヶ月ちょっと)という計算結果になります。
つまり、サラリーマンの労働時間である7時間を、そっくりそのまま勉強時間に置き換えられれば、1年ちょっとで合格レベルに達せられるのです。
大学の勉強に置き換えても、同じことが言えます。1日7時間、大学で講義を受けている時間をそのまま公認会計士試験の勉強に置き換えた場合でも、1年ちょっとで合格レベルに達せられるわけですよね。
サラリーマン経験がある方や大学で勉強熱心な方であれば、誰でも公認会計士試験に合格できる体力があります。おそらく、日本国民ほぼ全員が当てはまる条件ではないでしょうか。
もちろん、1日7時間と言わずもっとストイックに、たとえば1日10時間以上を勉強に費やせたら、1年以内の勉強で合格できる可能性も出てきます。
反対に、余裕を持って2年間の勉強での合格を目標にすれば、1日5時間程度の勉強でも合格レベルに達するでしょう。
公認会計士試験に合格するのに必要な勉強時間や各科目で必要な勉強時間については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
公認会計士試験の難易度が高いと言われる理由
とはいえ、世間的に公認会計士試験の難易度は高いと言われています。本項目では、高いと言われている理由についてお話ししていきます。
母集団のレベルが高い
まず、母集団のレベルが高いというのが、公認会計士試験の難易度が高いと言われる理由の一つです。公認会計士試験に挑戦する受験生は、有名国公立大学や有名私立大学を出ている人が多いです。
具体的には、最上位レベルで東大や京大などの難関国公立大学の出身者がいたり、早稲田や慶応などの難関私立大学出身の受験生もいたりします。MARCHや関関同立クラスの受験生も多いです。
上記のような人たちは、難しい高校受験や大学受験を突破していますし、元から地頭が良いケースも多いです。そして、そんな人たちですら、公認会計士試験の勉強をしていて、1日10時間近くの勉強も淡々とこなしています。
要は、試験に慣れていてかつ努力の基準値が高い人が多いわけです。公認会計士試験に合格するためには、そういった人たちに打ち勝たなければなりません。
合格率が低い
また、公認会計士試験の合格率が低いのも、難易度が高いと言われる理由の一つです。先ほどお話ししたとおり、第Ⅰ回短答式試験の合格率が約10%、第Ⅱ回短答式試験の合格率に至っては約5%です。
論文式試験の合格率は約30%で、短答式試験よりも上がるものの半分以上の受験生が落ちます。そして、試験全体を通しての合格率は約10%ですから、競争率10倍の試験となります。
合格率の低さを見ると、難易度の高い試験だと言われても仕方がないかもしれませんね。
勉強しなければならない期間が長い
先ほどお話ししたように、公認会計士試験は学習量がものすごく膨大です。膨大な学習量をすべて消化しようと思ったら、当然1ヶ月や2ヶ月などの短いスパンでは無理です。合格できるまでには、どれだけ早くても1年、通常2年はかかります。
そうなると、長期的な視点を持って自分なりにしっかり考えたうえで、戦略的に勉強スケジュールを組み立てていかなければなりません。
それに、長期間、試験勉強に対するモチベーションを維持しなければならないという、勉強とは別の問題とも戦わなければなりません。以上のような理由から、公認会計士試験は難易度の高い試験だと考えられているのです。
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公認会計士試験と税理士試験の難易度を比較
本項目では、公認会計士試験と税理士試験のどちらが難しいかを考えてみます。
まず、税理士試験と公認会計士試験で大きく異なる点は、税理士試験が科目合格制である点です。科目合格性を簡単に言うと、試験科目ごとに合格を認定してもらえるというものです。
税理士試験は全部で11科目あるのですが、そのうちの5科目に合格すれば税理士資格を取得できます。
科目合格制を利用すれば、たとえば1年で5科目中3科目の試験に合格して、翌年に残り2科目の試験に合格すれば、税理士試験に合格したと言えます。しかし、公認会計士試験は全科目を同時合格しなければなりません。
しかも、試験トータルの点数で合格水準を満たしても、一つの科目の点数が低すぎると足切りで不合格にされるケースもあります。この点、税理士試験は1科目ずつ合格すれば良いので、働きながらでも勉強に取り組みやすいです。
ただ、税理士試験は1科目のボリュームがものすごく多いです。暗記する内容が多く、全体を通して公認会計士試験よりも勉強時間は長くなる傾向にあります。
一般的に、税理士試験に合格するためには5,000~6,000時間は必要だと言われています。5年かかったという話も割と普通に聞きます。
つまり、公認会計士試験は短期決戦の試験である一方、税理士試験はどっしり腰を据えて、長期間の戦いが必要になる試験だと言えます。というわけで、早く実務経験が積みたい方は、公認会計士試験を受験するのがおすすめです。
公認会計士試験の難易度は世間で言われているより簡単
さて、本記事の本題に触れていきます。
冒頭でお話ししたとおり、私が公認会計士試験は世間で言われているよりも、意外と簡単であると思う理由についてお話しします。
間違った勉強をしている受験生が多いから
まず、一つ目の理由は間違った勉強をしている受験生が多いからです。
公認会計士試験の受験生の中で、有名国公立大学や有名私立大学に通っている人でも、意外と正しい勉強のやり方が分かっていない人が多いです。
一例を挙げると、予備校の講義に真面目に出席していたり、文章を書いて覚えようとしていたり、過去問を思考停止で解いていたりとかですね。
要は、非効率な勉強をやってしまっている受験生が多いのです。非効率な勉強を無視して、正しい勉強のやり方だけを実践できれば、勉強時間を劇的に短縮できて、公認会計士試験に短期合格できます。
受験生がやりがちな典型的な間違った勉強法については、以下の記事をご覧ください。
合格率の真実を知っているから
先ほどお話ししたとおり、公認会計士試験の合格率はものすごく低くなってますが、実は合格率には裏の数値があります。金融庁のホームページをよく見てみると、答案提出者の数が願書提出者よりもかなり少ないと分かります。
たとえば、平成30年第Ⅰ回短答式試験の願書提出者数は8,373人でしたが、答案提出者数は6,569人です。つまり、願書は提出してるけども、受験しない人が毎年相当数います。答案提出者だけで合格率を考えた場合、合格率は16%まで上がります。
公認会計士試験の表面的な合格率は低く見えますが、実際の合格率はもうちょっと高いわけです。
いい加減な気持ちで目指す受験生もいるから
また、言葉は悪くなるのですが、受験生の中にはいい加減な気持ちで公認会計士を目指している方もいます。
そういった方は、初めは予備校の講義に真面目に出ますが、途中で講義についていけなくなったり、学習量の多さに我慢できなくなって、途中でリタイヤしたりするのです。
先ほどお話した、願書を提出しながら受験しない人も、こういった方たちの中に含まれます。
時間的なハンデを負っている人もいるから
また、仕方のない話ではありますが、公認会計士試験の受験生は、時間的なハンデを負っている方も多いです。たとえば、大学生で学業と両立をしながら勉強している方もいるし、社会人で働きながら勉強を続けている方もいます。
時間的なハンデを負っている方たちにとって、毎日十分に勉強時間を確保するのは難しいです。
時間的なハンデを負っていない方はそんな人たちを差し置いて、半年間でも1日10時間近くの勉強を毎日続けられるだけで、あっさり試験に合格します。
公認会計士試験は努力が報われる試験でやれば一発合格できる
本記事では、公認会計士試験の難易度についてお話ししました。
一般的に言われているほど、公認会計士試験の合格のハードルは高くないとお分かりいただけたでしょうか。私が実際に試験を突破したからこそ言えることですが、公認会計士試験は努力が報われる試験です。
しっかりと考えて戦略的に勉強を進めれば、最難関試験と言われている公認会計士試験の短期合格も夢ではありません。
実際に、私もバイトやサークルなどで勉強に十分に時間が取れない時期がありましたが、無事に大学3年生のときに一発合格できました。短期合格を狙うためにも、まずは正しい勉強のやり方を知ることです。
早いうちに正しい勉強のやり方をマスターして、あとは勉強を本番まで続けられるだけのモチベーションや根気強さがあれば、誰だって試験に合格できます。