こんにちは、現役公認会計士の植村拓真(うえむら たくま)です。
公認会計士試験は必須科目が5科目、選択科目が4科目あって、全部で9科目の試験です。
とはいえ、選択科目は4科目のうちから1科目だけを選択して受験すれば良いので、実質的には6科目の勉強が必要です。
あなたは
と思ったかもしれませんね?はい、その通りです。私も受験生だった頃は「どんだけ勉強させるんだ、ボリューム多すぎでしょ…」と、何度も思いながら勉強していました。
ただ、試験科目によってボリュームがかなり変わるので、それを踏まえたうえで戦略的に勉強を進めなければなりません。
本記事では、そんな公認会計士試験の試験科目について現役会計士が徹底解説していきます。
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公認会計士の試験科目と免除制度について
冒頭でお話ししたとおり、公認会計士の試験は短答式と論文式の2種類あります。
- 財務会計論(簿記と財務諸表論が一緒になった科目)
- 管理会計論
- 企業法
- 監査論
- 会計学(財務会計論と管理会計論が一緒になった科目)
- 監査論
- 企業法
- 租税法
- 選択科目(民法・統計学・経済学・経営学のうち一つ選択)
試験科目は、短答式試験が4科目で論文式試験は5科目です。
公認会計士の資格を取得するには、上記の9科目から必須科目5つ、選択科目1つの合計6科目を受験しなければなりません。各科目については、後ほど順番に詳しく紹介していきます。
そんな公認会計士試験は短答式試験に合格すれば、不合格でも2年間は短答式試験の受験が免除されます。論文式試験から受験できるわけです。
さらに、論文式試験は科目合格制度が導入されているため、合格した科目は2年間受験が免除されます。全科目に一発合格する必要がないので、忙しい学生や社会人にとっても受験しやすい試験です。
公認会計士試験のおおまかな流れは、以下のとおりです。
↓
全科目に合格
(2年間短答式免除)
↓
論文式試験を受験
↓
科目合格
(各科目2年間免除)
↓
全科目に合格
↓
公認会計士試験は終了
実務試験へ
以上が、公認会計士試験の概要です。
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公認会計士試験の試験科目の内容
続いては、公認会計士試験の試験科目の内容について詳しくお話ししていきます。
財務会計論
公認会計士試験の勉強の中心になる科目です。どこの予備校で勉強していても、一番最初に勉強を始めるであろう科目ですね。最もボリュームが多い科目でもあり、それゆえに最も多くの勉強時間を必要とします。
財務会計論の勉強で得る知識は、公認会計士試験に受かって監査法人で働く際も監査論と並んでよく使う知識です。そういう意味で、実務に入ってからの世界でもとても大事な科目だと思って、気合を入れて勉強していく必要があります。
財務会計論は、簿記と財務諸表論の2つに分かれます。
簿記
簿記を一言で表すと、会社の決算書の作り方について学ぶ科目です。会社が物を売り買いしたときなど、会社が取引したとき、会計的にどういう処理をするのか、どんな仕訳を切るのかなどについて学ぶ科目です。
簿記はとにかくボリュームが多く、私の通っていた予備校では分厚いテキストが12冊もありました。テキストの内容に関連する問題集も同じく12冊あり、問題をこなすだけでもお腹いっぱいになりそうでした。
簿記は勉強に最も時間がかかり、本試験に対応できるレベルまで仕上げていくためには膨大な時間が必要な科目です。とはいえ、公認会計士としてのベースとなる知識なので、理解できなければ会計の専門家としてはお話になりません。
逆に言えば、簿記が得意であれば公認会計士試験でかなり有利に立てます。公認会計士を目指すかどうか悩んでいる方は、公認会計士試験の勉強を始める前に、簿記3級や簿記2級の勉強から始めるのもおすすめです。
簿記を勉強していて、楽しいと感じたり短期間で簿記の試験に合格できたりした方は、かなり公認会計士への適性があります。
実際私も、大学生になって公認会計士を目指すか悩んでいたときに、簿記2級の勉強からはじめました。そして、2ヶ月程度の勉強で簿記2級に合格できて、公認会計士を目指そうと決心できました。
財務諸表論
財務諸表論は、簿記で学習した決算書の作り方の理論的背景を学ぶ科目です。
具体的には、簿記で学んだ仕訳や会計処理が、どうしてそういう処理をするようにルールづけられているのか、どういう趣旨でそういうルールが設けられているのかなどについて学びます。
短答式試験の勉強の学習ボリュームは簿記ほどではないため、人並みにこなしていれば合格点を獲得できます。しかし、論文式試験のときは、租税法と並んでボリュームが多くて暗記する内容が多いため、学習にものすごく時間がかかります。
財務会計論の効率的な勉強法については、以下のページで詳しく解説しています。
管理会計論
管理会計論は、文字どおり経営者や工場長などの管理者にとって役立つ情報を提供するための会計理論を学ぶ科目です。
大きく分けて、製品や商品を製造するためにどれだけのコストがかかったかの計算方法を勉強する原価計算と、会社の財務状況を改善するために役立つ情報や経営陣の意思決定に役立つ情報を提供する管理会計の2つを学びます。
決算書は企業の外に発表する書類なので、財務会計論で学ぶ会計理論は、いわば会社の外部にとって役立つ知識です。
一方で管理会計論は、企業の内部管理にとって役立つ情報を提供する点で、会社の内部にとって役立つ会計理論ですね。
計算、理論共に財務会計論の次にボリュームがある科目なので、多くの受験生が財務会計論の次に勉強を始めます。
ちなみに、自分のお財布の管理の仕方については学べません。私も監査法人の新人スタッフだった頃、気が付いたら財布の中身が空っぽでした。まさに、管理会計論の知識が個人の財務状況の改善に役立たないことの証拠です。
管理会計論の効率的な勉強法については、以下のページで詳しく解説しています。
企業法
企業法は、企業を取り巻くさまざまな法制度について勉強する科目です。
会社法が勉強の中心になります。具体的には、会社には取締役や監査役など、どういう機関が必要になるのか、株式の発行にはどんな手続きが必要か、会社設立はどうすれば良いかなどについて学びます。
なお、短答式試験では、商法や金融商品取引法についても勉強します。勉強のボリュームはそこそこありますが、難解な問題はめったに出題されません。そのため、短答式試験・論文式試験共にちゃんと勉強していけば、得点源にできる科目です。
努力が報われやすい科目と言えます。
ちなみに論文式試験では、ほぼ白紙の解答用紙にびっしりと論述を書かされる羽目になります。私は答案を書いていて、手がめちゃくちゃ痛くなりましたw
企業法の効率的な勉強法については、以下のページで詳しく解説しています。
監査論
監査論は、公認会計士の独占業務である会計監査について学ぶ科目です。
そもそも会計監査ってなに?って話から、具体的な監査のやり方や理論的な背景を学びます。監査論で学ぶ知識は、監査法人に入って実務に就くようになってから一番使う知識です。
勉強のボリュームは少ないものの、学習する内容の難易度は高いです。実務に直結している科目なので、実務経験がない受験生にとってかなりハードルの高い科目だからです。
監査論は時間をかけても高得点を狙いづらい科目なので、そこそこの仕上がりになれば十分です。勉強にはあまり時間をかけすぎないようにするのがオススメです。それに、監査法人に入ったら嫌というほど学べますからね。
監査論の効率的な勉強法については、以下のページで詳しく解説しています。
租税法
租税法は、法人税法、所得税法、消費税法を中心に、日本の税金の仕組みや各種確定申告書の作り方を学ぶ科目です。
確定申告書とは、簡単に言うと事業を運営するのにあたって、
- 収入がこれだけ発生して
- それに対する費用がこれだけかかって
- 正味の利益がこの金額になって
- その利益にかかる税金がこれだけ
というのを計算した書類のことです。
公認会計士は基本的に大企業を相手にする職業なので、必然的に大企業に適用される法人税法が租税法の学習のメインになります。ただ、所得税法や消費税法の知識も、将来独立して会計事務所をやる際には必須です。しっかりと勉強しておきましょう。
短答式試験では出題されず、論文式試験において出題されます。
租税法はボリュームがかなり多い科目です。かといって早めに勉強したところで、知識は論文まで使いません。そのため、租税法の勉強は一旦放置して、まずは短答式試験の科目の勉強だけに集中したほうが効率的です。
租税法の勉強を開始するのは、12月の短答が終わってからで良いです。最悪、5月短答終わってからでも間に合います。かなりタイトに頑張らないといけませんけが…。
租税法の効率的な勉強法については、以下のページで詳しく解説しています。
経営学(選択科目)
経営学は、企業経営に関する理論を勉強する科目です。
金融商品の価格や企業価値を算定するためのファイナンス論と、いかに従業員をうまく働かせるかといった人的資源の活用法・マーケティングや経営手法について学ぶ経営・戦略論の2つに分かれます。
ボリュームが全科目中、最も少ない楽勝科目です。学習内容も簡単で、計算はいくつかの公式を覚えればほぼ終わりですし、理論も薄っぺらいテキストをちょっと勉強すれば合格レベルに達します。
本気でやれば1週間、長く見積もっても2週間あれば仕上がります。公認会計士試験のボーナス科目と言っても差し支えありません。
経営学の効率的な勉強法については、、以下のページで詳しく解説しています。
統計学(選択科目)
統計学は、標準偏差や回帰分析などの統計的な手法を学ぶ科目です。
会計監査においても、いくつかの取引をサンプルとして選んで、証憑や会計伝票のチェックを行ったりするときに、統計学の知識を使うことがあります。正直、ロボットが全部計算するため、公認会計士自身は統計学を使いません。
統計学の勉強では、微分や積分など難しい数学の知識も必要なので、よほどのことがない限りおすすめできない科目です。
経済学(選択科目)
経済学はその名のとおり、経済的な理論を学ぶ科目です。
企業や個人単位の経済の動きを学ぶミクロ経済学と、国単位のデカイ規模での経済の動きを学ぶマクロ経済学に分かれます。
微分などの難しい数学の知識が必要なので、数学が苦手な人にはおすすめできない科目です。
民法(選択科目)
民法は、全般的な国民生活についての法律について学ぶ科目です。
個人の財産に関する財産法と、家族に関する家族法などを学びます。統計学や経済学とは異なり高度な数学の知識は不要ですが、その代わりかなりボリュームが多い科目なので、これまたオススメができません。
公認会計士試験で選択科目はどれを選ぶべきか
本項目まで読んでいただいたらもうお分かりだと思いますが、短期間で公認会計士試験を突破したいのであれば、選択科目は経営学一択です。これしかありません。その理由についても、念のため補足します。
経営学を選ぶべき理由①:難易度が低い
先ほど経営学の見出しでお話ししたとおり、経営学は難易度が低いです。
計算については単純な公式をいくつか覚えるだけで試験に対応できますし、理論についても薄っぺらいテキストと問題集を一通りこなすだけで合格レベルに達せられます。
経営学を選ぶべき理由②:ボリュームが少ない
また、ボリュームが少ない点も選ぶべき理由の一つです。
私が通っていた予備校では、経営学の講義では薄っぺらいテキストが3冊配られただけです。本気を出せば、初学者でも1日あれば一回転できる程度のボリュームしかありませんでした。予備校の講義のコマ数も、他の選択科目の半分以下でした。
ただでさえ時間不足に陥りがちな公認会計士試験の勉強において、勉強時間が少なくて済むのはもの大きなメリットです。少ない勉強時間で済む分、浮いた時間を別の科目の勉強に当てられます。
経営学を選ぶべき理由③:受験生の大半が経営学を選ぶ
これまでお話ししたとおり、経営学は学習内容が簡単で勉強時間も少なくて済むメリットがあるため、ほとんどの受験生が経営学を選択します。これが試験本番でのリスクを下げてくれるわけです。
経営学の試験かなり難しい問題が出題されると、大半の受験生は正解できません。しかし、公認会計士試験は相対試験なので、難しい問題が解けなかったとしても、同じように他の受験生も解けていないため結局合否に影響がないわけです。
他の選択科目の場合、難しい問題に正答できなければ足切りをくらうリスクがあるので注意しましょう。
経営学を選ぶべき理由④:予備校が経営学について多くのノウハウを持っている
そして、大半の受験生が経営学を選ぶわけですから、予備校の講師は経営学の対策にものすごく力を入れます。
試験範囲を網羅的にカバーしてくれるのはもちろん、その年の試験委員について研究したうえで、かなり精度が高く試験での的中率も高い講義、問題集、答練を作ってくれます。
しかし、他の選択科目では、予備校に教えられる知識を持つ講師が少なく、質の悪い教材で勉強させられる危険性すらあります。
以上のような理由から、何か特別な事情がない限り、大半の受験生が経営学を選ぶわけです。では、その特別な事情とは一体何なのでしょうか。
答えをいうと、受験生自身が各選択科目のエキスパートであるケースです。
たとえば、弁護士が公認会計士試験を受ける際、選択科目として民法を選びます。弁護士は法律のエキスパートですからね。他にも統計学や経済学を選ぶような受験生は、大学でそういった科目を専攻していて、特定の科目についてすごく詳しいケースが多いです。
このように、経営学以外の選択科目を選んでいる受験生は、科目のプロフェッショナルであるケースが多いのです。
だからもし、あなたが経営学以外の選択科目を選んでしまった場合、エキスパートと競わなければなりません。かなり分の悪い勝負になってしまいます。
ですので、よほど選んだ選択科目について自信がある方以外は、素直に経営学を選択しておきましょう。